想定
◎グレオニー:愛情ルート中 護衛済
◎レハト:未分化/一人称僕/脳筋
レハト様が鍋食いながらグダグダしてるだけのお話です。
以前折本用に用意したものです。

「そういう訳で、君たちの協力を仰ぎたい」
「異議あり」
「なんだね、ハイラ君」
「やる気になれない場合はどうすりゃ良いですか」
「愚問だね、ハイラ君。君たちに拒否権などあると思うな」
「それ協力って言わないよねえ……」
 
 昼食の鍋を囲むのももう慣れたもので、どれ位の時間からスタンバっていれば肉にありつけるのかも完全に把握済みだ。
 肉を詰め込んだ椀を片手に、ハイラとフェルツを呼びつけて僕は相談を持ちかけていた。グレオニーはといえば、ローニカと何か話すことがあるらしく昼は別行動を言い渡されている。この相談を出来るのは今しかない。
 
「大体護衛が居るんだからやめなさいよ、御前試合なんて」
「そうですよ。先にグレオニーの胃に穴が開きますよ」
 
 この衛士達はまったくわかっていない。
 何のためにグレオニーを護衛に推した後まで僕が訓練場に通っていると思っているんだ。はじめこそグレオニーが目当てだったと堂々と言える。
 しかし自分に馴染む剣の重さを知り、間合いを知り、相手の手癖まで把握出来るようになってからというもの、一体この剣術はどこまで通用するのか試したくなるのも人情というものではないか。言葉にするだけで衛士達が慄く伝説のラニオー先輩とやらに手合わせ願いたくなるのが求道者というものではないか。
 
「手合わせだけなら今でも十分頼めるじゃないですか……」
「大体分かってんですか。御前試合で使うのは真剣で、訓練用の潰してあるヤツじゃないんだからね」
 
 珍しくハイラが正論を言い出した。これは面倒くさい。
 
「ただでさえあんた未分化でやりにくいんだから、御前試合にまで厄介なもの持ち込まないでくれませんか」
 
 お前御前試合なんて殆ど出てないじゃないか。
 僕だってあの試合場の中心で目立ちたい。勝利の喝采に両手を上げて応えたい。賞賛する側ではなく賞賛される側に立ちたい。
 
「……何で勝つことを前提に考えてるのこの子」
「前向き極まりますね」
 
 そうだ、前向きに検討を重ねていきたい。いかに次の御前試合に、グレオニーの目をかいくぐり出場をするのか。
 無理やり出場すると言い張ればどうにか通りはするだろう。
 するだろうが、その後にグレオニーと気まずくなるのは嫌だ。
 
「……あのさぁ」
 
 暑苦しく自分の要求を伝える僕の言葉半ばでハイラがため息をついた。
 
「護衛主が御前試合に出る意味、分かってんの?」
 
 何を言わんとしているのかさっぱり分からないので、隣のフェルツに目で解説を頼む。明らかにフェルツが困った顔をしているのだけは分かった。
 
「……勝ち進んでも勝ち進まなくても、護衛を持ちながら出るっていうのはお止めになる方が良いですよ」
 
 首を傾げると今度はハイラが面倒くさそうに口を開いた。
 
「あんたが出ること自体、自分の力量はこんくらいです、狙って下さいって言ってるようなもんなのよ。ねえ、本当にそこまで頭回んないの?」
「別に訓練をするのが悪いって言う訳じゃないですが、人前で披露することではないんですよ」
「ただでさえあんた護衛付けられる位には目立っちゃってんだから、そこで余計な披露してごらんなさいよ。何かあって怪我すんのは誰よ」
 
 なんて正論を言う衛士たちなんだ。それじゃあ僕が御前試合に出るのがそもそもよろしくないじゃないか。
 ではこういうのはどうだろう。君たちが出場して、負けてくれるっていうのは。
 
「目的を見失ってませんか」
「あと私たちの衛士人生を何だと思ってんの」
 
 ならばいっそ衛士になってやる。徴持ち権限で陳情してやる。
 
「迷惑」
 
 んもー! じゃあどうしろって言うんだよ!
 つれない返事にじたばたする僕の背後から、突然聞き慣れた声がした。
 
「レハト様、そろそろお部屋に戻りましょう」
 
 ビビり過ぎて椀を取り落とすところだった。いつの間にかグレオニーが僕の後ろに立っているではないか。慌てて椀の中のものを口に詰め込み、ハイラとフェルツに手を払う。話したら許さんからな。
 ……御前試合まではまだ日がある。その間にどうにか彼らを丸め込んでどうにか参加出来るように計画を練ろう。
 
 
 あたふたと訓練場を後にして部屋に戻る道すがら、グレオニーがおずおずといった様子で僕に話しかけてきた。
 
「……あの、レハト様」
 
 ……これは聞かれていたパターンだろう。いや、僕の決意は固いぞ。御前試合に出たいのだ。未分化のうちに様々な記録を樹立したいのだ。したいったらしたいのだ。
 強固な意思でもって見上げる僕の姿を見て、グレオニーが困ったように笑った。
 
「お気持ちは分かりますよ。俺も衛士ですから。……ただ、」
 
 ただ何だ。グレオニーまで色々面倒だからやめろと言うのか。
 グレオニーは頭をかきながら続けた。
 
「その……俺、レハト様が剣を振るわれてる姿をあまり大勢に見せたくないと言うか……。俺以外と剣を交えてほしくないというか……あ、ええと、すみません。わがままですよね」
 
 ……。
 出場の選択肢は今、きれいに消えてなくなった。おかしいな。心なしか足が勝手にスキップをしてしまう。

*   *   *   *   *   *
 
「ローニカさん、すごいです!効果てきめんでした!」
「私から申し上げても聞き分けて下さいませんからね。定期的にお願いしますね」
「はい!」
「では次に、沐浴を嫌がられた時の対応も練習しましょうか」
「お願いします!」